災害時、SNSで安全に情報発信する:「あなたの状況」を伝える方法と注意点
はじめに:なぜ災害時に自分の状況をSNSで伝えることが重要なのか
地震や台風など、大きな災害が発生すると、電話が繋がりにくくなったり、交通機関が停止したりと、普段当たり前にできる連絡や移動が難しくなります。このような非常時において、インターネット、特にSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)が、情報の lifeline(命綱)となることがあります。
「SNSは難しそう」「使い慣れていないから不安だ」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、災害時には、情報を「見る」だけでなく、「伝える」ことも非常に大切になります。
あなたが今いる場所の状況や、ご自身の安全をSNSで伝えることで、以下のような助けになります。
- 家族や友人への安否確認: 心配している大切な人へ、無事であることを迅速に伝えられます。
- 周囲への情報提供: 今いる地域の被害状況や、安全な場所などの情報を共有することで、他の人の避難や安全確保に役立ててもらえます。
- 支援が必要な場合のSOS発信: 孤立してしまい、助けが必要な場合に、具体的な状況を伝えることで、支援に繋がりやすくなります。
もちろん、やみくもに発信するのではなく、安全に、そして正確に伝えるためのポイントがあります。この先では、災害時にSNSで「あなたの状況」を伝えるための具体的な方法と、注意すべき点について、分かりやすく説明していきます。
災害時、SNSで「あなたの状況」を伝える基本的な方法
ご自身の状況をSNSで伝える基本的な流れは、普段の投稿と大きく変わりません。スマートフォンを使った一般的な操作を想定して説明します。
- SNSアプリを開く: スマートフォンの画面にある、使いたいSNSアプリのアイコンをタップします。例えば、普段LINEを使っている方であれば、LINEアプリを開くことになります。他のSNS(X、Facebookなど)をご利用の場合は、それぞれのアイコンを探してタップしてください。
- 投稿画面を探す: アプリを開いたら、「投稿する」「今どうしてる?」「何を書いてる?」のような表示や、ペンやプラスマーク(+)のアイコンを探します。これをタップすると、文字や写真を入力する画面になります。
- 伝えたいことを入力する: 入力画面に、伝えたい内容を文字で打ち込みます。
- まず、ご自身の安全を確認できたことを伝えましょう。 例:「〇〇(地名)です。無事です。」「自宅にいます。ケガはありません。」
- 次に、現在の状況を具体的に伝えます。 例:「建物の中にいます。揺れは収まりました。」「電気が止まっています。」「〇〇避難所に避難しました。」
- もし支援が必要であれば、具体的に書きます。 例:「水が不足しています。」「近くに〇〇があります。助けてください。」※ただし、具体的な住所や個人が特定できる詳細情報は、不特定多数が見る可能性のあるSNSでは避けた方が安全です。後述の「安全に伝えるための注意点」をご確認ください。
- 日付や時間を忘れずに記載しましょう。 情報がいつのものかが分かると、受け取る側が状況を判断しやすくなります。「○月○日○時○分現在」のように記載します。
- どこからの情報かを示す: 例:「〇〇町からの情報です」「私が目で見て確認した情報です」など、情報源が自分自身であることを示します。
- 必要であれば、写真や動画を添付する(注意が必要): 状況をより具体的に伝えるために、写真や動画を添付することもできます。投稿画面にある、カメラや写真のアイコンをタップすると、スマートフォンの写真一覧が表示されます。そこから共有したい写真を選んで添付します。
- 【重要】写真や動画の添付には特に注意が必要です。 何を撮り、何を添付するかについては、後述の「安全に伝えるための注意点」を必ずご確認ください。
- 投稿する: 入力した内容と添付する写真に間違いがないか確認したら、「投稿」「シェア」「ツイート」といったボタンをタップして発信します。
安全に「あなたの状況」を伝えるための注意点
災害時にSNSで情報を発信することは非常に役立ちますが、いくつかの注意点があります。安全にご自身や周囲の情報を伝えるために、以下の点を必ず確認しましょう。
1. プライバシーと個人情報に十分配慮する
不特定多数の人が見る可能性のあるSNSでは、個人情報や自宅、避難所の場所など、プライバシーに関わる情報の扱いに細心の注意が必要です。
- 自宅の正確な住所は書かない: 自宅の状況を伝える場合でも、「〇〇市〇〇町あたり」や「〇〇駅の近く」のように、大まかな場所の表現にとどめましょう。
- 自宅や避難所の外観が特定できる写真を添付しない: 自宅の表札、周辺の建物、部屋の間取り、避難所の看板などが写り込んでいる写真や動画は、個人や場所の特定につながる可能性があります。特に不特定多数が見る設定になっている場合は避けるべきです。
- ご自身の氏名、電話番号、生年月日などは絶対に書かない: これらは悪用される危険性があります。
- 家族など、他の人の情報は、本人の許可なく発信しない: 特に安否情報などは、本人の意思を尊重しましょう。
- SNSの設定で公開範囲を確認する: お使いのSNSによっては、「友人まで公開」「特定の人だけに見せる」といった公開範囲を設定できます。不特定多数に見られたくない情報は、限定公開の設定を検討しましょう。ただし、災害時は多くの方に情報が届くことで助けになる場合もあるため、目的に応じて公開範囲を判断することが大切です。公開範囲の設定方法が分からなければ、無理に操作せず、個人情報に配慮した内容を心がけましょう。
2. 情報の正確性を最優先する
災害時にはデマや不確かな情報が広がりやすくなります。ご自身が発信する情報は、受け取った人が行動を判断するための重要な情報となる可能性があります。
- 「自分で見て、自分で聞いたこと」だけを伝える: 「〇〇らしい」「~って聞いたけど本当?」といった不確かな情報は発信しないでください。
- 憶測や希望的観測を書かない: 「きっともうすぐ助けが来るだろう」「この地域は大丈夫だと思う」といった個人的な憶測を書くことは避けましょう。
- 古い情報を流さない: 過去の災害時の情報や、時間経過により状況が変わった情報を、最新の情報として発信しないように注意してください。可能であれば、投稿に「○月○日○時○分現在」と日時を入れるようにしましょう。
3. 写真や動画の添付は慎重に
状況を伝えるのに役立つ写真や動画ですが、扱いには十分な注意が必要です。
- 個人や場所が特定できるものが写り込んでいないか確認する: 上述のプライバシーに関する注意点と同じです。顔、車のナンバー、表札、特定の建物の外観などが写り込んでいないか、投稿前に必ず確認しましょう。
- センセーショナルな映像や、むやみに被害を強調するだけの映像は避ける: 他人の不安を煽るだけの情報発信は避けるべきです。
- いつ、どこで撮影した映像かを明確にする: 情報の信頼性を高めるため、撮影日時や場所を添えるようにしましょう。
4. 他の人の投稿を安易に「いいね」したり「シェア」したりしない
災害時には、信頼できる情報源からの情報とデマが混在しています。他の人の投稿を見て、「これはすごい」「役に立ちそうだ」と感じても、その情報が本当に正確かどうかの確認が必要です。
- 自分で情報の真偽を確認できない場合は、安易にシェア(リツイートなど)しない: 不確かな情報を拡散してしまうと、混乱を招き、他の人の安全を脅かす可能性があります。
- 信頼できる情報源からの発信か確認する: 公的機関(気象庁、国や自治体など)や、テレビ、新聞といった主要なメディアのSNSアカウントからの情報であれば、比較的信頼性が高いと考えられます。後述の「信頼できる情報源の例」を参考にしてください。
- デマを見分けるヒント:
- 情報源が不明確なもの(「友達の友達から聞いた話」「匿名の情報」など)。
- 感情を強く煽るような内容(「大変なことになっている!」「絶対に○○しないで!」など)。
- 具体的な日時や場所が書かれていない、曖昧な情報。
- 公式発表と明らかに異なる情報。
信頼できる情報源の例
災害時、情報の正確性が最も求められます。SNSを利用する際には、以下の情報源からの情報を確認するように心がけましょう。
- 国・自治体:
- 気象庁、内閣府、首相官邸
- お住まいの都道府県や市区町村の公式アカウント
- 警察、消防、自衛隊などの公式アカウント
- ライフライン関連企業:
- 電力会社、ガス会社、水道局などの公式アカウント
- 主要メディア:
- NHK、各テレビ局、新聞社の公式アカウント
- 交通機関:
- 鉄道会社、バス会社などの公式アカウント
これらの情報源は、情報発信する際に独自の確認手順を踏んでいます。これらの公式アカウントをフォローしておくと、いざという時に情報が見つけやすくなります。(フォローの仕方については、別の記事で詳しく解説しています。)
まとめ:安全な情報発信で、あなたも誰かの力に
災害時、SNSでご自身の状況や周囲の情報を伝えることは、ご自身の安全確保だけでなく、助けを必要としている人や、安否を心配している人への大切な情報提供となります。
「SNSは難しい」と感じていた方も、まずは「無事です」といった短いメッセージを発信することから始めてみましょう。そして、この記事でご紹介したプライバシーへの配慮や情報の正確性の確認といった注意点を守ることで、安全に、そして効果的にSNSを活用することができます。
無理のない範囲で、あなたも災害時の情報ネットワークの一員として、できることから始めてみてください。あなたの発信が、誰かの安心や安全に繋がるかもしれません。