災害時にSNSで安否を伝えるとき、どこまで書いて大丈夫?プライバシーを守る基本
なぜ災害時にSNSの「公開範囲」を気にする必要があるのか
災害が発生したとき、ご自身の無事を知らせたり、家族や大切な人の安否を確認したりすることは、非常に重要です。また、地域の方と助け合ったり、必要な支援を呼びかけたりするために、SNSが役立つ場面も多くあります。
しかし、SNSに情報を書くときに「自分の情報がどこまで他の人に見えるのだろうか」「安易に個人情報を載せてしまって大丈夫だろうか」と不安に思われるかもしれません。特に、普段SNSをあまり使わない方にとっては、誰が自分の投稿を見られるのか、公開される範囲が分かりにくいと感じることもあるでしょう。
災害時は、混乱に乗じて悪意のある情報が流れたり、個人情報を不正に入手しようとする人が現れたりするリスクもゼロではありません。そのため、ご自身の安全と安心を守るためには、SNSで情報を発信する際に、どのような情報なら安全に公開できるのか、誰に情報を見せる範囲に設定できるのかを知っておくことが大切です。
このページでは、SNSで安否情報などを伝えるときに、ご自身のプライバシーを守るための基本的な考え方と、簡単にできる設定のポイントについて、分かりやすくご説明します。
SNSで情報を「公開する範囲」とは?
SNSには、ご自身が投稿した写真や文章を、誰に見せるかを調整できる機能があります。これを一般的に「公開範囲」や「プライバシー設定」などと呼びます。
この公開範囲の設定によって、ご自身の投稿を
- インターネットにつながっているすべての人が見られる状態(全体公開)
- SNSで「友達」や「つながりのある人」に設定した人だけが見られる状態
- 自分で指定した特定の人だけが見られる状態
のように分けることができます。
災害時、安否情報などを発信する際は、この公開範囲を意識することが、ご自身の安全を守る上で非常に重要になります。
災害時に安否情報などを書くときの基本原則
では、具体的にどのような情報を、どの範囲で公開すれば良いのでしょうか。安全にSNSを利用するための基本原則をいくつかご紹介します。
原則1:具体的な「居場所」や「連絡先」は慎重に
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避けるべき情報:
- ご自宅の正確な住所や番地
- 今いる建物の具体的な名称(例: 「〇〇マンションの302号室にいます」)
- ご自身の電話番号やメールアドレス
- 現金の保管場所や貴重品に関する情報
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公開しても比較的安全な情報(状況による):
- 〇〇町(市町村名)に避難しています、といった大まかな地域名
- 〇〇小学校の体育館に避難しています、といった公的な避難所の名称(ただし、避難所の混雑状況や危険情報につながる可能性もあるため、状況を見ながら判断しましょう)
安否を知らせる目的であれば、「〇〇町の自宅(または避難所)で無事です」といった大まかな情報に留め、具体的な場所や連絡先は、信頼できるご家族やご友人に対して、個別のメッセージ機能などを利用して伝えるようにしましょう。
原則2:家族構成や財産に関する情報は書かない
- 「一人で家にいます」「妻と子供は避難しました」といった家族構成に関する情報
- 「家の中は無事でした」「貴重品を持ち出せました」といった財産に関する情報
これらの情報は、安否確認のためには必要ありませんし、悪用されるリスクにつながる可能性があります。必要最低限の情報(「無事です」「ケガはありません」など)に絞って伝えるようにしましょう。
原則3:「誰に」見せるか意識する(公開範囲の設定)
SNSによっては、投稿ごとに公開範囲を設定できるものがあります。
例えば、Facebookであれば、投稿の際に「公開」「友達」「自分のみ」などのボタンを選ぶことができます。
- 「公開」: インターネット上の誰でもあなたの投稿を見ることができます。安否情報など、多くの人に広く伝えたい情報の場合は有効ですが、上記でご説明した具体的な個人情報を含めないように細心の注意が必要です。
- 「友達」: あなたがSNS上で「友達」として承認している人にだけ投稿が見えます。ご家族や親しい友人だけに安否を伝えたい場合に適しています。
- 「自分のみ」: これはメモのように使う機能で、他の人からは見えません。
Twitter(X)の場合は、基本的に投稿は「公開」になりますが、「鍵アカウント(非公開アカウント)」に設定することで、あなたが承認したフォロワーだけが投稿を見られるようにできます。ただし、これはアカウント全体の公開設定であり、投稿ごとの設定はできません。
LINEの場合は、基本的に1対1のトークやグループトークでのやり取りになり、投稿は「タイムライン」と呼ばれる場所に表示されますが、これも公開範囲を設定できます。
普段SNSをあまり使わない方は、ご自身のSNSアプリを開き、「設定」や「プライバシー設定」といった項目を探してみてください。スマートフォンの画面右上に人のマークや歯車のマーク(⚙️)があれば、それをタップしてみると設定画面に進める場合があります。設定画面では、「あなたの投稿を見られる人」「あなたのプロフィールを見られる人」といった項目があるはずです。最初は難しく感じるかもしれませんが、「友達だけに公開する」といった設定にしておけば、知らない人に情報が見られるリスクを減らすことができます。
もし設定方法が分からなければ、お近くの詳しい方に聞いてみるか、各SNSの公式ヘルプページを参照してみてください。
信頼できる相手との連絡に役立つ機能
災害時、最も安否を確認したいのはご家族やご友人、親戚でしょう。こうした方々との連絡には、SNSの以下の機能も役立ちます。
- 個別メッセージ機能(DM): 特定の相手と1対1で、他の人に見られることなく連絡を取り合えます。より具体的な状況や情報を伝えるのに適しています。
- グループ機能: 家族だけで共有するグループや、近所の方々とのグループを作成しておくと、まとめて安否確認をしたり、地域の情報を共有したりするのに便利です。グループ内のやり取りは、そのグループのメンバーだけが見ることができます。
これらの機能を活用することで、安全かつ効率的に、大切な人たちと連絡を取ることができます。
デマや偽情報に注意する
災害時には、不確かな情報やデマがSNSで広がることもあります。個人情報を守るのと同じように、流れてくる情報の真偽を確かめることも非常に重要です。
- 信頼できる情報源(公的機関、主要な報道機関など)からの情報か確認する
- あまりに感情を煽るような情報や、個人情報の入力を求めるような情報には安易に反応しない
といった点に注意してください。デマ対策については、このサイトの別の記事でも詳しく解説していますので、そちらも参考にしてみてください。
まとめ:安全にSNSを活用するために
災害時にSNSは非常に役立つツールですが、安全に使うためには「どんな情報を書くか」「誰に見せるか」を意識することが大切です。
特にSNSに慣れていない方は、まずは以下の点を心がけてみてください。
- 書く内容に注意: 具体的な住所や連絡先、家族構成などは公開しない。安否確認は「無事です」「〇〇町にいます」など、必要最低限の情報に留める。
- 公開範囲を確認: SNSアプリの「設定」などから、自分の投稿が誰に見えているか確認してみる。「友達まで」や「非公開アカウント」といった設定を活用することも検討する。
- 信頼できる相手には個別連絡: ご家族など、本当に伝えたい相手には、個別メッセージや限定公開のグループ機能を使う。
災害はいつ起こるか分かりません。日頃から少しだけSNSの機能に慣れておくと、もしもの時にも慌てずに対応できるでしょう。この情報が、皆様が災害時にも安心してSNSを活用するための一助となれば幸いです。