もしもの時、SNSの「いいね」や「リツイート」を押す前に確認したいこと
災害時、SNSはなぜ役立つのでしょうか
災害が発生した時、テレビやラジオからの情報だけでは間に合わないこともあります。そのような時、多くの方が利用しているのがインターネット、特にSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)です。SNSは、今起きている状況や、助けを求める声、避難所の情報などがリアルタイムで発信されることがあります。スマートフォンがあれば、いつでもどこでも情報を得られる可能性があるため、災害時には非常に役立つツールとなり得るのです。
SNSが役立つのは、以下のような点です。
- 迅速な情報収集: 発生直後の被害状況や、公的機関からの緊急情報などが素早く共有されることがあります。
- 安否確認: 家族や知人が無事であることを伝えたり、連絡を取り合ったりする手段として使われることがあります。
- 支援要請・情報提供: 困っている場所から助けを求めたり、必要な物資や支援の情報を提供したりする人がいます。
しかし、SNSには誰でも自由に情報を発信できるという特徴があるため、中には誤った情報(デマ)や古い情報が混ざってしまうことがあります。災害時、これらの情報に惑わされることなく、安全にSNSを活用するためには、いくつかの注意点を知っておくことが大切です。
今回は、SNSで情報を見る際に、つい操作してしまいがちな「いいね」や「リツイート」といった機能について、その意味と、災害時にこれらの機能を使う前に確認していただきたい大切な点をご説明します。
「いいね」や「リツイート」とは何ですか?
SNSには、他の人が投稿した情報に対して、自分の気持ちを伝えたり、その情報を周りの人に知らせたりするための機能があります。代表的なものが「いいね」や「リツイート」です。
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いいね:
- 一般的に、共感したり、良いと思ったりした投稿に対して押すボタンです。
- ハートマークや親指を立てたマークのアイコンで表示されることが多いです。
- このボタンを押すことで、「この投稿に注目しています」「良い情報だと思います」といった意思表示になります。
- あなたが「いいね」を押したことは、あなたの友人や繋がりのある人たちに知られることがあります。
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リツイート:
- 他の人の投稿を、自分のSNSページに載せて、自分の周りの人たちにも見てもらうための機能です。
- 矢印が循環しているようなアイコンで表示されることが多いです。
- この機能を使うと、元の投稿が、あたかもあなたが投稿したかのように、あなたのフォロワー(あなたの情報を見ている人たち)の画面に表示されます。
- つまり、情報を拡散する(広める)ための機能です。
災害時、これらの機能が持つ意味
「いいね」や「リツイート」は、普段使う分には便利な機能ですが、災害時には特別な意味を持つことがあります。
良い点としては、以下のような場合です。
- 役立つ情報の迅速な拡散: 公的機関からの避難指示や、信頼できる救助要請などが素早く多くの人に届く助けとなります。
- 支援の輪を広げる: 必要な支援の情報がリツイートによって広まり、助けを求める人と支援できる人を繋ぐきっかけになることがあります。
しかし、危険な点もあります。
- デマや誤情報の拡散: もし誤った情報や古い情報を「リツイート」してしまうと、それが正しい情報であるかのように見えてしまい、多くの人にデマを広めてしまう可能性があります。
- 混乱を招く: 不確かな情報やパニックを煽るような投稿に安易に「いいね」や「リツイート」をすることで、周りの人々に不要な不安や混乱を与えてしまうかもしれません。
特に「リツイート」は、情報をあっという間に多くの人に届ける力があるため、使う際には十分な注意が必要です。
「いいね」や「リツイート」をする前に確認したいこと
災害時にSNSで情報を見つけたとき、「これは役に立つ情報だ」「みんなに知らせなければ」と思うことがあるかもしれません。しかし、その場で感情的に操作するのではなく、一度立ち止まって、次の点を確認するようにしましょう。
確認点1:その情報は信頼できるか
最も大切なのは、情報の信頼性を確認することです。
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誰が発信していますか?
- 投稿している人の名前(アカウント名)を見てみましょう。公的機関(気象庁、自治体、警察、消防など)や、テレビ局、新聞社といった主要なメディアのアカウントであれば、比較的信頼性が高いと考えられます。
- 個人名のアカウントの場合、その人が本当に信頼できる情報源なのか、過去の投稿などを少し見て判断できると良いです。ただし、個人の見極めは難しい場合が多いです。
- アカウント名の横に、そのSNSの運営者が認めた信頼できるアカウントであることを示す特別なマーク(例:認証バッジ)がついているか確認するのも一つの目安になります。
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他の情報源でも同じ情報がありますか?
- もし可能であれば、別のSNSや、テレビ、ラジオ、主要なニュースサイトなどでも同じ情報が報じられているか確認してみましょう。複数の信頼できる情報源が同じ内容を伝えている場合、その情報の信頼性は高いと考えられます。
- 特定のSNSだけでしか見られない情報は、注意が必要です。
確認点2:その情報は正確ですか?
信頼できる発信元からの情報であっても、古い情報が再び拡散されたり、一部だけが切り取られて伝わったりすることがあります。
- いつの情報ですか?
- 投稿された日時を確認しましょう。災害時は状況が刻々と変化します。数時間前の情報でも、今は状況が変わっている可能性があります。特に避難所の開設・閉鎖情報や被害状況、交通情報は最新である必要があります。
- どこに関する情報ですか?
- 具体的な場所(市町村名、地域名など)が明記されているか確認しましょう。漠然とした情報や、自分のいる場所とは違う場所の情報かもしれません。
確認点3:安易な拡散のリスクを理解していますか?
「困っている人がいるなら早く知らせたい」「危険な場所の情報を広めたい」といった善意から「リツイート」をしたくなるかもしれません。しかし、確認が不十分なまま拡散してしまうと、かえって多くの人を危険に晒したり、混乱させたりすることにつながります。
- 「いいね」や「リツイート」は、その情報に「お墨付き」を与えていると周りの人に見られる可能性があります。 自分自身が情報の真偽を十分に確認できていないうちは、安易な「いいね」や「リツイート」は控えるのが賢明です。
- 特に「リツイート」は、あなたのフォロワーに対して、その情報が正しいものであるかのような印象を与えかねません。 「これは怪しいかもしれない」「確認が難しい」と感じたら、絶対にリツイートしないようにしましょう。
信頼できる情報源を優先しましょう
災害時には、公的機関(国、都道府県、市町村など)や、NHK、共同通信、時事通信、主要な新聞社、テレビ局などの情報が最も信頼できます。これらの機関もSNSで情報発信を行っていますので、事前にアカウントを探してフォローしておくことをお勧めします。
SNSで気になる情報を見つけたら、まずはこれらの信頼できる情報源で同じ情報がないかを確認する習慣をつけましょう。
その他の注意点
SNSは便利な反面、多くの情報が流れ込んでくるため、心身が疲れてしまうこともあります(SNS疲れ)。特に災害時は、不安な情報や衝撃的な写真・動画なども目にする可能性があります。無理してずっと見続ける必要はありません。情報を得る時間と、SNSから離れて心を休める時間のバランスを取ることも大切です。
また、個人の安否情報などをSNSで発信する際は、公開範囲に注意し、プライバシーに関わる情報を不用意に広めないよう気をつけましょう。
まとめ:安全な情報活用を心がけて
災害時におけるSNSは、非常に強力な情報ツールです。しかし、その力を安全に、そして効果的に使うためには、受け取った情報を鵜呑みにせず、一度立ち止まって真偽を確認する冷静さが必要です。
特に「いいね」や「リツイート」といった拡散機能を使う際は、その情報が本当に役立つものであり、信頼できる、最新の情報であることを十分に確認してください。安易な操作が、自分自身だけでなく、多くの人の安全に関わる可能性があることを忘れないでください。
情報の波に飲み込まれず、ご自身と大切な方を守るために、賢くSNSを活用しましょう。